2009年6月17日 (水)

大正末期の少年漫画覚え書き

少年少女雑誌に載った漫画が欧米風のコマを割った漫画形式を採り入れ始めるのは、だいたい大正末期で、「正チャンの冒険」が大正12年に掲載開始していますが、その後「のらくろ」に至るまでの期間となると、現実にはかなり多様なスタイルが生まれて混沌としている感があります(とはいうもののこの時期の雑誌をまとめて読んではいないのですが)。
大正と昭和の境では長崎抜天や藤井一郎がいますが、大正の子供向け漫画の代表的な作家である山田みのるが漫画漫文形式ではないコマ割りを割ったスタイルの漫画に取り組んでいたのを見つけて、この作家が大正14年に亡くなってしまったのは実に残念と思わずにいられませんでした。

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2008年4月15日 (火)

国際児童文学館の存続を求める要望書が出ました

児童小説家、批評家のひこ・田中さんが運営されている「児童文学書評」のページに日本マンガ学会からの「大阪府立国際児童文学館の存続を求める要望書」が公開されていました。

検索エンジンで、「児童文学書評」を見つけてください。

存続要望の署名の第二次活動もはじまりました。「児童文学書評」のトップページに用紙が用意されております。署名を募る上で要望書が参考になると思います。


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「飛ぶ教室」でマンガを読みました

石井桃子さんの訃報に接し、久しぶりに書店の児童書コーナーに行ったりしていましたが、
国語の教科書で知られる光村図書から出されている「飛ぶ教室」のバックナンバーを読んでいたら、第8号(2007年冬号)にウィンザー・マッケイの「夢の国のリトル・ニモ」とフランク・キングの「ガソリン・アレイ」というアメリカの新聞マンガが数編載っていました。リトル・ニモは1905年にはじまっているとのことですが、細密な描画と奇想によってなんとも豪華です。「ガソリン・アレイ」というマンガを私は知りませんでしたが、1930年、1934年、1931年?の作品が選ばれていて、これがまた素晴らしい。1934年と記されているものは池に映る上下逆さになった風景の中を空を飛ぶように泳ぐというアイデア。1931年?かよく読み取れませんがそちらは4段3列のコマがただひとつの光景を区切っていて、おのおののコマの中で会話をしている人物たちの会話をたどりながら、なんとなくストーリーがあるような錯覚を起こすという面白い趣向となっています。ちょっと文章でうまく説明できていないかもしれませんがみればわかります。

石井桃子特集のほうは第11号(2007年秋号)となっています。昨年が生誕100年と気づかなかったのでなくなられたと知ってあわてて探してきたのですが、年表がついていて日本の近代児童文学史が一望できるようになっています。
たとえば昭和7(1932)年に菊池寛の紹介で犬養毅首相の書庫の整理をしていたことや(この年5.15事件で犬養首相が暗殺されている)、昭和15(1940)年に「熊のプーさん」を岩波書店から刊行していること、その翌年に「ドリトル先生 アフリカ行き」を井伏鱒二訳で出していて、戦後児童文学の出発点となった「ノンちゃん雲に乗る」は昭和18年頃に完成を見たらしいことなどが記されていて、あらためて戦後文化をリードした巨人の偉業を思うのでした。

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2008年4月14日 (月)

国際児童文学館の問題について、日本マンガ学会から存続要望書が出ます。

日本マンガ学会から正式に公開するのは休み明けになるとのことですが、現在の日本のマンガ研究の先頭に立って奮闘しておられます宮本大人さんのブログで先行公開されています。

宮本さんはそれまでの戦後マンガ史の枠組みを超えて、日本の近代マンガを表象文化としてその歴史をたどる研究を精力的に進めてきました。つまりマンガの中だけで閉じるのではなく美術や文学、児童文化をめぐる状況を踏まえながら、日本のマンガ表現がどのような変遷をたどってきたのかを解明しようという本格的なアプローチを実践してこられて、往々にして愛好者の趣味と見られてきたマンガの研究をきちんと学問として認知させる役割を背負ってこられました。

その研究は一般にはまだ広く知られていないかもしれませんが、画期的な手塚治虫研究を著した夏目房之介さんや、マンガに造詣が深い編集者の方々などマンガ界からもその功績を認められています。マンガ文化研究の価値と可能性を示すことによって、大学でマンガを研究対象とする学生も増えてきました。

私自身細々と週末に個人研究をしていたところで宮本さんの研究を知っていろいろと触発されてきました。漫画を通じて昭和モダニズムから戦時の文化や社会状況についていろいろなことを知るようになってきました。その知識は現在の状況を自分なりに理解する上でもさまざまな示唆に富んでいると思っています。

正式に公開された時点で続報を掲載します。「たかがマンガ」であっても貴重な史料であることを多くの人に知ってほしいと思います。

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2008年4月 9日 (水)

引き続き児童文学館の件です。

先日私も児文に行って会報の臨時号をもらってきました。

活動について

・特別研究員制度による研究成果を公表、企画展を行って、各公共図書館に貸し出し展示を実施
・国際交流事業としてアジアの児童文学を収集、紹介、シンポジウムの開催。

児文と図書館のシステムの違いについて

1.児童関連に特化しているので図書館とは異なる分類体系で詳細なデータを作成している
2.資料の文化財的機能を重視、本の帯も捨てずに保存
 図書館のように雑誌を合本にすることはない。

漫画もライトノベルも少年少女向けであれば対象となります。大阪府民の負担を考えれば全国の愛好者が知恵を出して支援していくことが望ましく、そのためには地域や世代を越えた交流なども期待したいと思います。

前回書いた記事から以降、まだ大阪府の方針についてはっきりとした状況は伝わってきておりませんが、署名活動のほうはそろそろ集計のため、署名用紙を10日を目処に児童文学館を育てる会の事務局宛てに返送していただく形になっておりますので、ご関心のある方はよろしくお願いします。
また実際に利用するなどしてそのままの形で存続させる必要について自分の意見ではっきりと書くことができれば、直接大阪府のページの「知事への提言」に存続を願う要望メールを送るなどもご検討してみてください。

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2008年4月 2日 (水)

大阪府立国際児童文学館存続にご協力お願いします

一年を越えたブランクになってしまいましたが、私のこのブログではマンガ周辺と児童文化の紹介をしておりますので、この場で大阪府立国際児童文学館存続のお願いをしたいと思います。特に戦前、戦中生まれの方にご関心を持っていただきたいと思っております。

大阪府立国際児童文学館は普通の児童図書館の役割を越えて、あらゆる児童文化の資料を収めるという国内でも他に類を見ない「児童文化情報センター」として日本の児童文化を背負ってきました。21世紀に入って国立国会図書館が上野に「わが初の国立の児童書専門図書館」として国際子ども図書館を設立し、児童図書資料を集約させるようになりましたが、大阪府立国際児童文学館と館内構成がとてもよく似ており、お手本にしたのではないかと思われます。
しかしながら、大阪府立国際児童文学館がユニークなのは、戦前から戦後にかけて書店ではなく駄菓子屋や露店などで販売されたいわゆる「赤本」や、紙芝居、雑誌については付録までを収集、所蔵してきた点です。世間から「俗悪」で文化的価値がないとみなされてきた赤本漫画など、個人が所蔵している以外にはここにしかない、というような資料まで含んでいます。これは例えれば近代文学館が文学者の原稿用紙や書簡まで収集するように図書館の機能を越えた活動をしてきたからであって、国際児童文学館にしかないような貴重な資料を府立の図書館が統合しようとしても手に余ります。まず国際児童文学館だからこそできる催しごとができなくなってしまいます。国際的な交流の拠点としてきわめて重要な施設であることを知っていただきたいと思います。

存続を求める署名運動が行われております。ご協力お願いします。

私の言葉が足りないところについてはこの件についてまとめたサイトが立ち上がりましたのでまず次のリンク先を参照してください。署名についてもそこからリンクされています。

大阪府立国際児童文学館存続を求めるお願い

またYahooかgoogleの検索で

「大阪府立国際児童文学館」 IICLO / The International Institute For Children's Literature, Osaka

を検索してみてください。よろしくお願いします。

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2007年2月25日 (日)

雑誌読みから少し離れて

90年代の終わりまではひたすら雑誌読みに徹してきた私ですが、長編はけっこう読み飛ばしていたりして、2000年を過ぎてからはそろそろ集めるだけでなく何とかしなくっちゃという気持ちと、いいかげん40歳も近いのにしゃしゃり出るのもどうなのかなどと思い始めていましたが、3年前くらいまではそれでも習性でかなり飛ばしていた感じがします。
別マなどはいまだに購入しつつなんかまともに読んでいないなあという状況なので、椎名軽穂の「君に届け」が昨年見事にヒットしましたが、この連載がはじまった号とか「ラブ★コン」の連載開始号とかがなぜかあっさりと部屋の中にあったりして、でも読んでないじゃん、みたいな状況にずっと前からなっていて、「君に届け」はおまけつきの初版限定を急いで集めてしまいましたが、「CRAZY FOR YOU」をまるで読んでいないじゃん、とかつい思いました。まあいいおっさんがいまさら読まんでええよとも思いますが、年をとると3年くらいあっという間に経っていて見事に取り残されています。
そこで実際に新人がデビュ−して注目したのっていつごろまでだったか年表とか探してみたのですが、河原和音とか芦原妃名子あたりくらいまでは何とか覚えているんですね。90年代の前半くらいでしょうか。デビュー年って検索してもなかなか見つかりませんね。
ところで椎名軽穂からどうつながったのか覚えが無いのですが、羽柴麻央は最近どうしているのでしょうか。つい最近気になって最新のコミックスを買ったのですが、かなり独特な方向に向かっていっていたのでそういえば最近どうしているのかと思ったのでした。平成16年度(第8回)文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品に「マブタノヒト」が選ばれていて、他に選ばれている作品が今でも有名な作品が多いこともあってちょっと驚きました。短編の地味な作家と言う印象が強いのですが、先ほどたまたま2002年の別マスペシャルを見たら100ページ2本立てが椎名軽穂の「恋に落ちる」と羽柴麻央の「Grapefruit Moon」という組み合わせで、Grapefruit Moonって実はトム・ウェイツの曲だったりするのですが、長らく別マの地味な短編にフォーカスを当てて読んできた読者としてはこのあたりを見落としているのはもうずいぶんまともに雑誌を見ていないなあとちょっとショックでした。自分の読んでいた流れでは冬野さほで一度止まってしまっていて、羽柴さんはデビュー当時の雰囲気から気にしていたつもりだったのですが、現時点で単行本未収録のものがないかちょっと探してみようかと思います。

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2006年12月 3日 (日)

牧美也子「マキの口笛」復刊など

このブログはココログフリーを使っているのですが、コメントやトラックバックがあってもスパムに埋もれてしまうので、もっと上のバージョンに変えようと思ったところ、フリーからベーシック、プラスには移れないのだそうです。私はniftyの会員なのでAmazonアフィリエートの使えるプラスに移転しようと思っていますが、思うように作業が進みませんでした。
それでとりあえず最近の話題をここで書いておきましょう。

「ラブ★コン」連載終了

いま発売中の別マを買い損ねていたのですが、人気ヒット作の「ラブ★コン」が最終回でした。別マでは他にも連載終了作品がいくつかあって、今後どうなるか気になりますが、ここ2,3年はほとんど積ん読に近かったので、ネット上の情報で動向を把握するという妙な状況になっていますけど、別マのカラーそのものは他の人気連載も続いているので大きく変わることはないでしょう。「ラブ★コン」について何かを論ずるというのは野暮というかその魅力はみんなよく知っているのだからその必要を感じないですけれども、ただ、多田かおるがリードしてきた学園コメディをきちんと引き継いだ由緒正しい別マの看板作品であったでしょう。

Young Youや旧りぼん系のカラーが入ってきているコーラスのほうに何か影響が出るかと考えても、別マから誰か作家が移ってくるかとかとりあえず思いつきません。YOUのほうは着実に充実していますね(でもこれ以上雑誌を家に増やさないため定期購入して読んではいないのですが...)。

牧美也子「マキの口笛」復刊

水野英子、わたなべまさこと並んで、いえそれ以上に昭和30年代にトップレベルの広い人気を誇り、読者に強く支持されて男性作家優位だった少女雑誌に女性まんが家の地位を確立させた作家というべき牧美也子さんの初期の代表作が雑誌おこしを用いてついに復刊されました。
牧さんというとやはり草分けとしてジャンルを確立させたレディースコミックの作品は入手しやすいですが、それ以前の作品は読む機会を逸してきました。

牧さんの描く少女の絵がリカちゃん人形の顔のデザインに採り入れられたのは有名な話で、そのような作家の少女まんが作品がなかなか読めないのは、原稿が散逸しているのも大きな理由でしょうが、この時期の少女まんががきちんと評価されてこなかったこともあるでしょう。10代でデビューする作家が多かった頃に、一度銀行勤務を経て書籍問屋であったという家業の事情から退職してから20代になって少女まんが家に転身したと言う経歴からも、もう少し年長向けの「少女」や「少女クラブ」に描いた作品にはもっと大人っぽい部分が出ている可能性があるのではないかと思っています(以前ほんの一部の短編を読んだことがありまして、
もっと瞳に意思がこもっていたものを見ています。レディースコミックをいち早く手がけたこともありますし)。

「マキの口笛」はりぼんの連載ですが、何はともあれ少女まんが史的にはずせない作品が当時の状況の解説も含めて出されたことは大変意義深いものでしょう。
たとえば巻末の対談によれば「マキの口笛」の連載された当時は女の子が口笛を吹くのはいましめられていた時代であったそうです。
いまの女の子では想像がつかないかもしれませんが、牧さんと親子ほど年の違う私があくまでも想像してみれば、口笛を吹くことははしたなく、そして不良っぽいとみなされていたのかなくらいの感じがします。しかしながら、実際どのような感じでそれが許されなかったのかとなるとその時代を少女として過ごした女性でないとわからないでしょう。

 

マキの口笛 Book マキの口笛

著者:牧 美也子
販売元:小学館クリエイティブ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

これは前後編に分けられるほど分厚いのですが、貸本でこのような分厚いものは少なくとも私は見たことがなく、昔原稿が散逸していて他の人がトレースし直した虫プロのコミックスでは全3巻になりますが、たぶん分冊にしてしまうといまの人は最後まで読まないからと判断されたのかもしれません。700ページで3800円しますけど必読の一冊であるでしょうから(まだ読み始めていませんが)、今回の出版を行った小学館クリエイティブの英断に感謝したいと思います。

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2006年11月29日 (水)

テスト

とりあえず試しに更新してみます。あまり時間がないのでテストのようなもの。

最近髪の毛が薄くなってきまして、帰宅途上で帽子を探してみたのですが、最近帽子をかぶっている人ってあまり見ませんね。いい帽子はけっこう高いし、なかなか似合う帽子がありません。

最近読んだ本ですが、今の設定だと本の書影とか出せないんだっけ。12月からにします。

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2006年11月 4日 (土)

手塚治虫とニッポンのマンガ

最近は情報収集する時間がなかなかないのですが、手塚治虫が亡くなる前の最後の講演が明日放映されるというのでちょっと書いておきます。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/061105.html

2006年11月5日(日) 午後9時〜9時59分
NHKスペシャル「ラストメッセージ」シリーズ第一回目とのこと。以降、物理学者の湯川秀樹、映画監督の木下恵介と続きます。

講演自体を見たわけではありませんが、亡くなる前に何かの賞に出席した写真ではびっくりするほど痩せていて、ショックを受けた覚えがあります。
亡くなる直前まで病室でもマンガを描いていたというようなことも何かに書いてあったと思うのですが、マンガの神様というよりもマンガの神様に選ばれてしまった人、という感じです。

 

ニッポンのマンガ―AERA COMIC Book ニッポンのマンガ―AERA COMIC

販売元:朝日新聞社
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また戦後デビュー直後にアメリカのプランゲ文庫に保管された作品も収められ、どんなマンガでも描けた手塚の才能がうかがえるものです。
手塚治虫文化賞10周年記念で出された本。大賞受賞作家の5人が書き下ろしで1000円ちょっとというのはかなり安い値段でしょう。

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