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2006年3月 6日 (月)

あすなひろしの「嵐が丘」がオンデマンド出版で登場

ずいぶん間があいてしまいましたが、久々に伝説の作品を紹介できることになりました。

みなさんは、あすなひろしという漫画家をご存知でしょうか。1959年(昭和34年)というまだマーガレットやフレンドが創刊される前に月刊少女クラブ(講談社)と少女ブック(集英社)でほぼ同時デビューして(たぶん少女クラブのほうが先ということになっています)、貸本時代を経ずに雑誌でいきなりデビューしたと思われるマンガ家としてはまだきちんと調べがついていないものの最も早い作家ではないかと思われます(持ち込み?)。最初から少年マンガには目もくれず少女まんがを明確に志向していたことは確かで、水野英子のような壮大で華麗な作風はデビュー当時の貸本では望めなかったでしょう。

マーガレットを経てハイティーン向けの「女学生の友」(小学館)や「小説ジュニア」(集英社)などに流麗な絵柄で叙情的な作品を多数書き、70年代になると少年ジャンプに短編を描いたあと、少年チャンピオンが「ドカベン」、「ブラックジャック」、「がきデカ」をはじめとする強力なラインナップで少年マガジンの劇画時代以後に一時代を画した時期があるのですが、その中で「青い空が、白い雲をかけてった」という不定期シリーズ連載を載せて、当時の劇画のGペンで描いた荒々しい線とはまったく異質な、端麗な描線と誰も真似できないような緻密でグラデーションも自在なカケアミと、背景を時には緻密に描き時には大胆に省略するという独特の空間構成で、一部の少年読者に多大な衝撃を与えました。

そのときの私を含めた少年読者の多くは少女まんが家としても活躍し続けていたことを知らなくて、朝日ソノラマから出たコミックスで少女雑誌や青年誌にも描いていることを知った私は驚いたものです。

男性の少女まんが家としては第一人者であったちばてつやが70年代初めに少女マンガから離れると、男性作家の少女まんがからの撤退は決定的になって、やはり少女向け恐怖まんがの巨匠であった楳図かずおの傑作「洗礼」や、手塚治虫が久々に少女マンガを手がけた「虹のプレリュード」の連載を例外として、70年代の後半まで一流クラスで少女まんが家を続けていたのはあすなひろし以外に私の知る限りではほとんど見当たらず、70年代になってから少女向け作品を描いた吾妻ひでおとあだち充をこれに合わせて、高橋留美子の登場による一大転換期の先がけとして80年代以降の少年マンガに少女マンガのテイストを持ち込んだ3人を、私は「3あ」と名づけたいと思います。

そのあすなひろしが卓越した画力をもって少女マンガファンを魅了していたのは60年代末頃がピークで、「嵐が丘」はその中でも最も名高い作品のひとつとして伝説となっています。60年代のまんがは原稿が行方不明のものが多く、状態の良い掲載誌をお貸ししてくれた方のご好意により、ついに「嵐が丘」のオンデマンド出版が実現したのでした。

かく言う私も先日見本誌を見る機会がありましたがきちんと読んではおらず、これから注文しようと思っています。一般書店への流通は困難なので、コミックパークで購入してください。

注文のページはこちらになります。

なお、あすなひろしの作品は、貴重な単行本未収録作品からも厳選して、原稿を管理しているご遺族の協力を得て、あすなひろし追悼サイトから同人出版によりコミケットやコミティアへの参加出展が行われている他、オンライン書店bk1、ジュンク堂池袋本店で扱っています。

商業出版ではエンターブレインから出版されていますが、今後出版の可能性もありますのでお楽しみに。エンターブレインからでているのは少女マンガではありませんが以下の2冊です。

青い空を、白い雲がかけてった―Hiroshi Asuna memorial edition Book 青い空を、白い雲がかけてった―Hiroshi Asuna memorial edition

著者:あすな ひろし
販売元:エンターブレイン
Amazon.co.jpで詳細を確認する

いつも春のよう―Hiroshi Asuna memorial edition Book いつも春のよう―Hiroshi Asuna memorial edition

著者:あすな ひろし
販売元:エンターブレイン
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「コミック新現実 vol.6」でも特集が組まれました。表紙の絵がこれぞあすなひろし、というべき絵柄で、みなもと太郎先生へのインタビューなどによって、リアルタイムの少女まんがファンと少年マンガファンがお互いに知らなかった点、特にハードボイルド作品で青年誌でも活躍して、バロン吉元先生からもお墨付きがついていることなどこの伝説的な作家の全体像に迫ります。

Comic 新現実 vol.6 Book Comic 新現実 vol.6

販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

60年代のマンガについては現状でもその状況がきちんと伝えられているとは言いがたい面があり、あすなひろしや楳図かずおの存在は当時の少女マンガ状況を明らかにするうえでも特に価値あるものだと思います。ぜひ興味を持つ方が増えて、当時の証言が増えるきっかけになってほしいと願うしだいです。

あすなひろし追悼サイトも近々リニューアルが予定されておりますので、ご期待ください。

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