リニューアルしたコーラスのコミックスリストを見て
今回は前回の続きにしますが、コーラスという雑誌には私はけっこう思い入れがありまして、かなり長くなりますが20年ほどさかのぼって別マからのつながりでちょっと書いてみたいと思います。
私のおぼろな記憶ですが80年代の中盤ころにマンガがつまらなくなったという声を耳にしていました。これからは同人誌シーンのほうが面白くなるだろうという意見が多くて、確かにコミケにはさべあのまさんや青木俊直さんなどがいて、早稲田漫も後にプロになるさそうあきらさんをはじめ、実験指向が強く出て面白いことになっていて、明大や東京女子大からも後にプロになる作家が描いていて勢いがありました。
私も当時読んでいた少年マンガや青年マンガに飽きてきたような気はしていたのですが、そのへんの記憶は曖昧で、たぶんLaLaが黄金時代からかげりが見えたのがマンガがつまらないという声のもとだったような気がします。とにかく少女まんがを読まずばマンガマニアにあらずというような頃が一時期あったのが、コミケットの隆盛とともに同人誌に関心がうつっていき、面白い少女まんががないかと聞くと川原泉とか誰に聞いてもだいたい白泉社系だったので、みんな読んでいるけど話題にはなりにくい集英社系を手始めに読むようになりました。普通の少女まんがはまだ敷居が高かったと感じていた頃です。
りぼんはとっつきやすかったのですが別マはかなり読みづらかった、というのはみんな絵が信じられないくらい下手だった印象が強かったのです。くらもちふさこさんの絵がもともと描線など個性的な面があったところに、多田かおるさんが登場して新しい絵柄が模索されるようになった面はあったのかなと思います。その中で読みやすかったのは藤村真理さんでしたが、首が太くて少年誌的なところがあってこれも変わっていました。
やがて紡木たくさんが登場しブームになって、これはやはり面白いんじゃないだろうかと思って別マを購読するようになり、バックナンバーを現代マンガ図書館まで見に行くようになります。
80年代の別マまんがスクールは新人の登竜門としてかなり多彩な才能を輩出する役割を果たしました。あくまで部外者の推測ですが、おそらく専属契約でコミックスを出してくれることが保証されていたのではないかと思います。
マンガスクールは1983年から86年にかけて、私の記憶違いでなければ別マ・デラマまんがスクールという名称になっていました。理由は不明ですが短編作家に力を入れようという感じがします。
紡木さんが活躍し始めた85年頃、私が面白いと思ったのはどちらかといえばデラックスマーガレットのほうで、とりわけあきの香奈さんが異彩を放っていたのでした。また週マと別マの共同編集でザ・マーガレットが創刊されていました。新人はザ・マーガレットからはじめて人気が出ると別マ、デラマ、週マに振り分けられるような感じです。読み切り重視でデラマへのウェイトが上がっていたのではないかと思われます。
さて、別マ・デラマまんがスクールがはじまった83年にデビューした作家で私が記憶している限りでは、とりうみ詳子、矢野りん子、山田朝子、佐野未央子、芳成かなこ、高橋りえ子、五彩きょうこといった顔ぶれですが、これは私には正直言って驚きでした。作風が個性的な人が多い上に見事にばらけています。とりうみ詳子はモーニングを経て後にヴァルハラという代表作をA-haという雑誌に描き、山田朝子はやまだないとに名前を変えてヤングマガジンから再デビューします。デビューしてともに3年くらいでおそらく選別があり少女まんがから離れてしまいます。五彩きょうこさんの初期作品はギャグでないのに主役の女の子が鼻を垂らしていたり意図的に不細工に描かれながらシリアスな展開を目指していました。
ところでこのまんがスクールより前に、別マ・デラマ新人まんが賞が設立されており、あきの香奈、紡木たくを輩出していました。多田かおるさんの活躍にはじまる80年代の別マの新しい波がこのへんで確立し、長く活躍している斉藤倫さん、藤村真理さんなどもデビューしていました。
今年で創刊11年目となるらしいコーラスで佐野未央子さんと芳成香名子さん(かなこより改名)が現在も描いていますが、創刊当初はNew別マまんがスクールでデビューして後に一躍有名になる冬野さほさんが読者ページのカットを描いていました。今では愛犬系エッセイマンガ家として知られる芳成さんを私自身はあきの-冬野の流れに位置づけていたのですが話すと長くなるので(大まかにいうと絵本系と児童文芸路線ですがそう言ってしまうとあまり説明になっていない)ここでは記しません。83年デビュー組が二人描いているところが私にとってコーラスらしいところでしょうか。
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君のいない楽園 8 (8)
著者:佐野 未央子 |
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こむぎ日和 お散歩できないダメダメ編
著者:芳成 香名子 |
そのように私の読者歴の中で興味深い別マ・デラマまんがスクールでしたが、ザ・マーガレット誌上でオールマーガレット新人まんが大賞が新たに設立されるとともに 1986年の1月をもって終了し、New別マまんがスクールになります。その最後にデビューしたのが名取ちずるさんで、惜しくも昨年亡くなられたのですが、名取さんも一時コーラスに進出していたのでした。
そこでタイトルにつながるのですが、最新号のコーラスのコミックスリストに名取さんの遺作になったコミックスも載っておりました。ちづると誤植されていましたけど、それを見てどちらかといえば地味な作風の多いコーラスの歴史を感じさせるものでありました。
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ぐるぐる迷路23 マーガレットコミックス
著者:名取 ちずる |
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